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昨日某組織の基調講演で青山学院大学陸上競技部監督の原晋監督の講演を聞いてきましたので内容と感想をシェアしたいと思います。箱根駅伝の指導経験を通して得られた目標達成、人材育成、そして組織づくりに関する普遍的な知見を学ぶことができました。箱根駅伝を単なる競技としてではなく、「教育ツール」として捉える視点の重要性をお話し頂きました。
目標達成プロセスの普遍性
組織が「ワンチーム」となるための最も重要な要素は、「理念の共有」。ミッションと行動指針を掲げ、その理念に基づいて行動することで、箱根駅伝で「優勝させる」という最終目標達成に向けて進む。
また目標達成のために「組織における強み・弱みを客観的に分析しすること「人、金、情報」というリソースをどう活用するかということは、スポーツだけではなくビジネスの局面においても共通する「普遍的な要素」。
各自の責任の全うと問題の所在地特定
組織を「勝てるワンチーム」にするためには、全員がそれぞれの立場で自身の「責任」を認識し、全うすることが不可欠。例えば何か問題が発生した際には、それが組織の問題なのか、個人のスキルの問題なのかを明確に特定することが、適切な対策を講じ、勝てるチームに昇華させる第一歩。
ビジネスメソッドと逆算思考の活用
また原晋監督が特に重要としている指導哲学の一つが「逆算思考」。箱根駅伝であればスタート時間は明確で動かすことは出来ない。マイルストーンから逆算して、日々の練習、生活、学業までを計画的に進めることで、確実に目標達成を目指していく。ビジネスにおいても決算日に向けて、逆算して行動する。売上目標に対しての進捗状況や行動量など。またKKD(勘、経験、度胸)も重要な要素だが、データに基づいた分析をすることで、より効果的にゴールを達成することが可能になる。
非認知能力の育成と協調性の醸成
学力やIQといった数値化できる「認知能力」はインターネットの普及や生成AIの台頭で、誤魔化せるようになってきている。そのため昨今はAIでは代替できない人間固有の「非認知能力」の育成が重要性を増している。非認知能力とはやり抜く力、自制心、忍耐力、回復力(レジリエンス)、向上心、自信、楽観性、共感性、社会性、協調性など。非認知能力(コミュニケーション能力)を高めチーム内での率直なコミュニケーションを促進するためには、「心理的安全性の確立」が不可欠。また「同調」と「強調」を区別し、自分の意見を明確に述べた上で他者と協力して目標達成を目指す「協調性」である。日本では意見を言わず雰囲気に流される「同調性」が多く蔓延し、言わないことが美徳とされているが、強い組織を作り、勝てる組織を作るには、自分の意見をしっかり伝え、提案し、手を挙げて発言することが「良いこと」であるという文化を醸成する必要がある。
フィードフォワードの活用
未来完了形で解決策に焦点を当てる「フィードフォワード」の活用が重要。フィードフォワードは、未来志向の方法で、対等な立場で建設的な議論を促し、ポジティブな組織文化を醸成できる。一方で日本の教育現場やビジネスで主流のフィードバックは過去の誤りを指摘する過去志向の行動。どちらがいいではないが、両者の特性を理解し、状況に応じて適切に使い分けることが人材育成と組織改善において重要で、フィードバックフォワードをもっと取り入れるべき。※アメリカの研究などによっても、未来志向の方がチームが強くなるというデータもある。
自律を促す思考と当事者意識
「物事のルールはいつ、誰が、何のために作られたのか」を常に考える思考を持つことが重要。言われたことをそのまま実行するだけでなく、物事の本質を捉える力を養うことで、自律性を高める。原晋監督は毎朝気になるニュース記事をピックアップし、その問題点と3つの対策案を考える訓練をしているとのこと。この習慣をつけることで問題解決能力を向上させることができた。(ひるおび!のコメンテーターもこの習慣のおかげで対応出来ている)目標当事者意識を持ち、未来志向で考えるよう促すことが大切。
「勝利」の定義の再構築
組織の作り方や育て方は「勝利」の定義の仕方によって変わる。単に箱根駅伝での優勝や出場だけであれば別の方法もあるが、そこが人生のゴールではないので「入部した学生が4年間で確実に自己ベストを更新する」「4年間きちんと勉強して単位を取る」「卒業後の進路を保証する」という3つの広範な「勝利」を定義した。また挑戦の最中には失敗もある。失敗には大きく分けて3週間あり「①シンプルミス(防ぐことが可能な失敗)」「②システムミスによる失敗」「③チャレンジによる失敗」の3種類があり、それぞれ対処法が異なる。特に、真剣に取り組んだ結果の「③チャレンジによる失敗」は、むしろ褒めるべきであり、チャレンジしない文化は組織の没落につながる。また失敗の原因を隠さず、嘘をつかず、みんなで話し合う文化を作ることが重要。
まとめ
基調講演1時間+質疑応答40分あっという間の時間でした。今後ウィンカムとして組織拡大をしていき、人を育て、組織を鍛えて行く際の大きなヒントを得られたと思います。責任と覚悟、楽しいことを選び続ける。胸に刻んでビジネスを更に拡大していきたいと思います。
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